米国への日本人旅行者数、国際市場では4位まで回復、ディズニーは大谷効果で好調、体験にお金を払う新傾向

2024年9月末、日米観光交流年事業の一環として「日米観光交流年シンポジウム」が開催された。米国への日本人旅行者の早期回復に向けて、参加者の間で現状や課題を共有。さらに、今後に向けた取り組みや期待などを議論した。

冒頭、ブランドUSAは米国における日本市場の現在地を説明。コロナ前の日本人渡航者数は年間約350万人で、国際市場では英国に次ぐ第2位の規模だったが、2020年には約60万人まで減少。しかし、2023年には約150万人まで回復し、ランキングも2020年の11位から7位まで上昇。さらに2024年は1月~8月で約120万人で第4位となった。ブランドUSA 日本地区ディレクターの早瀬陽一氏は「2024年末までには第2位に戻るのではないか」と期待をかける。

また、2019年の米国への日本人渡航者の割合は、本土39.2%、ハワイ42.1%、グアム18.2%だったが、2023年は本土が52.8%まで拡大した。一方、相対的にハワイは37.7%、グアムは8.9%まで下がった。このことから、ハワイとグアムの回復が米国全体の底上げには必要との認識を示した。

早瀬氏は、現状の課題として、現地コストの増加や円安を挙げたほか、コロナ禍を経て、日本の旅行会社で海外旅行事業に携わる人材が減っている点も指摘した。

今後の市場拡大の機会としては、日米観光交流年事業に加えて、大谷翔平選手の活躍で注目が集まるメジャーリーグ、2024年末までに本格導入が予定されている事前入国審査プログラム「グローバル・エントリー・プログラム(GEP)」を挙げた。

ディズニー、拡張計画と周年事業をきっかけに

ディズニー・ディステネーション・インターナショナル・マーケティング&セールス・バイスプレジデントのジェフ・ヴァン・ランゲヴェルド氏は、日本人の来園者について、「カリフォルニアの『ディズニーランド・リゾート』も、フロリダの『ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート』も、コロナ前の水準に戻りつつある」と明かしたうえで、特にカリフォルニアでは、LAドジャースの大谷翔平選手の活躍が、日本人旅行者の増加につながっているとの見方を示した。

今後については、両リゾートでの拡張計画について触れ、新たなアトラクションやショーが続々と登場することから、日本人の来園者の増加につながるとの期待する。また、2025年の「ディズニーランド・リゾート」開園70周年も、日本市場拡大のきっかけになるとの考えを示した。

コロナ後の旅行者の特徴としては、「体験にお金を払う傾向が強まった」という。そのなかで、ディズニーは有利な立場にあると自信を示した。

ディズニー・ディステネーション・インターナショナルのランゲヴェルド氏

ハワイ、旅行者とローカルコミュニティをつなぐ商品開発

ハワイ・ツーリズム・オーソリティ(HTA)最高管理責任者のダニエル・ナーホオピイ氏は、「重視するのは旅行者数ではなく旅行支出だ」と強調。そのうえで、コロナ前のハワイにおける旅行支出の66%が米国国内市場、13%が日本人市場だったが、その構成に変化が起きていることを説明した。

2024年7月の時点では、米国国内市場のシェアが80%まで高まっている一方、日本市場は5%まで低下しているという。ナーホオピイ氏は「他の国際市場と比較して、日本人旅行者は一人当たりの支出が高い。このため、現在の状況は州の税収を維持するのを難しくしている」と明かした。

日本市場の復活に向けては、「付加価値を提供していく必要がある」との考え。その一つとして、旅行者とローカルコミュニティをつなぐ商品開発を挙げ、「ハワイのエシカルな暮らし方、歴史文化、スピリチュアルな体験などの開発を進めている」。その例として、「Beautiful Hawaii」などプロモーションを効果的におこない、ハワイを初めて訪れる人に向けて、「ワクワク感を醸成し、一つ一つの島のブランド価値を高めていく」。また、日本市場では米国本土の状況から安全性やアジア系への差別に懸念があることから、「ハワイでは安全な旅行が楽しめることも伝えていく」と付け加えた。

そのうえで、日本人旅行者が2019年水準に戻るのは2027年ごろとの見通しを示した。

HTAのナーホオピイ氏

ポートランド、まずはファンにフォーカス

ポートランド観光協会インターナショナル・ツーリズム・アドミニストレーション・ディレクターのヘザー・アンダーソン氏は、オレゴン州には日系移民の長い歴史があることから「日本とは強い結び付きがある」と紹介。また、ポートランドは、異なるものを積極的に受け入れる文化、様々な人々を受け入れる多様性を大切にしていることから、旅行しやすいデスティネーションであるとアピールした。

一方で、2023年の日本からの旅行者は、2019年比で50%減。2024年に入って、企業視察や教育旅行などで回復傾向にあるが、レジャー旅行は回復が鈍い。理由として円安に加えて、「成田/ポートランド線の直行便が運休になった影響は大きい」との見解を示した。

今後については、「まずは、ポートランドのファンに戻ってきてもらいたい」として、ポートランドのコーヒーショップやレコードショップなどディープな街の魅力を訴求していく。また、ローカルコミュニティや地元大学との協力を通じて日本市場へのリーチを強めていきたい考えだ。

日本人旅行者の完全回復については、2026年頃と予測している。ポートランドにとって、日本は英国に次いで第2位の国際市場。「観光局としての日本市場に対する期待と優先順位は変わっていない」と強調した。

ポートランド観光協会のアンダーソン氏

マイアミ、日本市場に初参入

グレーター・マイアミ観光局は、ツーリズムEXPOジャパンに初出展した。同局トラベルインダストリー・セールス・ディレクター のジョー・ドカル氏は、日本市場に向けて「マイアミは非常に多様性にあふれたデスティネーション」と説明。多様なアトラクション、2カ所の国立公園、クルーズ、ビーチなどを紹介するとともに、1年を通してスポーツからアートまでさまざまなイベントが開催されていることを強みとした。

そのうえで、初めて日本市場へのプロモーションに参入するにあたって、日本語サイトを用意。「今後、日本の消費者へのリーチを強めていきたい」と意欲を示した。

また、コロナ後の変化としては、欧州市場の変化を指摘。「マイアミは費用がかかるデスティネーションという認識から、滞在時間が短くなり、購買力も低下している」点を課題として挙げた。

グレーター・マイアミ観光局のドカル氏

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