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エイチ・アイ・エス(H.I.S.)と日本通信は2018年2月15日、格安SIMを中心とした多角的な通信サービスを提供する合弁会社「H.I.S.モバイル」を設立した。今後、H.I.S.の強みである国内外のネットワークや海外旅行者へのアプローチと日本通信の通信事業のノウハウや通信技術を生かし、低コストの通信サービスを展開していく。
H.I.S.モバイルへの出資比率はH.I.S.が60%、日本通信が40%。代表取締役社長にはH.I.S.で長年ハワイの商品造成に携わってきた猪腰英知氏が就任する。猪腰氏は会見で、「これまで(ツアーなど)商品造成のなかで、通信環境の悪さと通信料の高さに課題があった」ことを明かし、H.I.S.の顧客層は若者が多く、価格志向も強いことから、日本通信との協業により、その課題を解決するところにビジネスチャンスがあるとの考えを示した。
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H.I.S.モバイルは同日より、先行して国内向けに音声付データ通信500MBの格安SIMをH.I.S.モバイルのサイトで販売を開始。価格は月額945円(税別)で、2GB、6GB、10GB、20GBプランも用意する。期間限定キャンペーンとして今年3月31日までは1万名限定で月額390円で提供する。また、今年5月1日をめどに、海外で利用できる格安SIMもローンチする予定。利用料金は1日500円を想定し、主要な日本人海外旅行先を含め世界70カ国で利用できるようにする。
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日本通信社長の福田尚久氏は会見で、海外旅行向けSIMの特長を「変幻自在のSIM」と説明。「高額なローミングを利用することなく、また、国ごとにSIMを入れ替える必要もなく、現地の回線を現地価格で利用できるところが強み」と強調した。
また、SIM上のアプリもローンチし、将来的にはアプリでスマホ決済などのサービスも提供していく計画も明かした。さらに、今後拡大が見込まれるインバウンド市場に合わせて、訪日外国人旅行者向けのSIMも提供し、H.I.S.の海外275拠点で販売を展開していきたい考え。
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猪腰氏は当面の目標についても言及。「MVNO事業者上位10位に入るために、今後3年以内に50万件を目指す」と明かした。また、現在MVNO利用者は1000万人と推計されているが、そのマーケットに切り込むのではなく、約1億6000万人の大手キャリアユーザーに新しいサービスを訴求していく考えも示した。
加えて、通信環境の改善と通信料の低減化が見込めることから、「旅行先でのタビナカ販売とのシナジー効果も生まれる」との期待感を表したほか、「将来的には商品への組み込みも考えられるのではないか」と話し、旅行事業との融合に含みをもたせた。
H.I.S.会長兼社長の澤田秀雄氏は、「通信料金は依然として高い。それを切り崩す最初のチャレンジ」と新会社を位置づけるとともに、電気事業の参入で電気料金の低減化に成功していることを挙げ、「通信料金を少しでも安くし、消費者に還元していきたい」と意気込みを示した。
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