日本のインバウンドにとって、欧米豪市場の獲得、大都市圏集中から地方への拡散が期待されているラグビーワールドカップ(W杯)。2019年9月20日の開催まで100日を切ったいま、世界の旅行者はどのように動いているのだろうか。
その予測を旅行市場に特化したトラベルデータコープとして、データ分析やマーケティングを手がける世界的企業のADARAが具体的な数値で示した。企業間で互いのデータを共同利用することで、自社だけでは得られないオンライン旅行者の検索や予約データを構築し、対象市場の予測を可能にするテクノロジーを提供している。ADARAがこのほど開催した記者会見で発表した、ラグビーW杯2019日本大会の訪日客動向を紹介する。
滞在日数は平均2週間以上
ADARAの事業の1つである「ADARA Impact」は、旅行者の検索動向や予約状況、マイレージやリワード会員のステータスなどのデータを集約する分析プラットフォーム。これらで集まった世界のリアルな旅行予約データ(対象期間は2018年9月~2019年4月の予約)によると、豪州、欧州、その他カナダや南アフリカといったラグビーW杯主要参加国からの訪日客シェアは通常、全体の5~20%に過ぎないが、開催期間中の2019年9~11月はなんと約50%に上る日もあるという。
ADARAの日本カントリーマネージャー兼コマーシャルディレクターの森下順子氏は、「期間中は明らかに欧州、豪州からの訪日が増えると予測できる」と指摘する。
主要参加国からの旅行者の日本滞在日数は平均2週間以上。ただ、21日以上も2割近くに上り、試合がある全国各地をめぐることが予想され、地方に小売りや飲食、体験観光プランのチャンスが広がるのは明らか。予約の際の人数分布は、オーストラリア・ニュージーランドが平均2人、ヨーロッパが1.8人、その他が1.7人。カップル旅行が多いこともうかがえるという。
富裕層が増える傾向に
航空座席のクラスはヨーロッパからの旅行者の34%が上級クラスを選択しているのがポイント。同社の分析によると、ヨーロッパの通常期の富裕層訪日客は13.5%だが、ラグビーW杯開催中は16.9%に上昇。これら富裕層は1泊350ドル以上、ビジネス・ファーストクラス利用、エリート会員、頻繁にリゾートへ旅行する属性が強いことなども想定され、「こうしたデータをもとに、特定の旅行顧客へどのタイミングでどうプロモーションするか。データ活用でターゲティングがよりダイナミックになる」(森下氏)。
地方自治体やDMO向けに提供する新製品「ADARAデスティネーションマーケティングクラウド」のPRのために来日したADARA、CEOのレイトン・ハン氏も「訪日客が増えるなか、日本の旅行業界を発展させるために、データが需要と機会をサポートできる」などと力を込めた。