2019年6月末、“タビナカ”サプライヤーを対象にした国際カンファレンス「アライバル(Arival)アジア太平洋会議」がタイ・バンコクでおこなわれた。アジアで初開催となった同イベントには、世界各国から現地ツアー、アクティビティ、アトラクション施設などを手掛ける500人以上が集結。3日間にわたってさまざまなセッションが展開された。
この場で議論されたアジア太平洋市場における旅行ビジネス事情、そこから読み取るべきことを6つにまとめて報告する。
※この記事は、Arival社が運営するニュースメディアに掲載された英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
1:アジアは遅れている? そんな考えはもう終わりにしよう 予約システムの導入、流通におけるコネクティビティ、オンライン予約では、欧米が先行してきたかもしれないが、この状況はもう長くない。今やアジア太平洋市場の旅行マーケット規模は世界最大で、その成長スピードはどこよりも速く、消費者はずっと先に進んでいる。ショッピングも、予約も、様々な支払いも、モバイル端末上に移行しており、この分野では西欧をとっくに追い越している。アジア市場の消費者は、一刻も早く、同レベルの対応ができるようになることを、ツアー催行会社や流通サービスにも求めている。
2:他とは全く異なるアジアの流通事情 アジア市場には、OTAだけで50社ほど、さらにオフラインで流通に従事するトラベル関連企業が何千社もある。これほど複雑かつダイナミックな流通網が張り巡らされたマーケットは他にはない。いずれ再編・統合が進んでいくことは避けられないが、それまでしばらくの間は、主要なグローバルOTA、ローカル市場に強い地場企業、B2Bホールセラー、DMC(デスティネーション・マーケティング会社)など、様々な流通経路に対するマネジメント戦略は不可欠だ。
3:価格のコントロールは困難 文字通り、そういうことだ。今回のイベントで最も指摘されていた問題は、再販業者による激しい割引合戦で、タビナカを扱うオペレーター側には、なすすべがない。こうした不満は、オンラインかオフライン(従来型の旅行会社)かには関係なく、流通全体に蔓延している。状況の改善に向けて、多くの人が期待を寄せていたのはMSP(最低販売価格)の導入だが、言うは易く行うは難し。再販業者の中には、オペレーターが設定した価格や、自社の集客コストすらも下回る安値で販売している業者もいる。
4:オペレーターが流通も担い、流通業者がオペレーターにもなる アジア市場全般でよくある事例が、大手旅行会社やDMCが、様々なツアーやアクティビティ、アトラクションをまとめて取扱うアグリゲーターの役割も担い、これを海外のグローバル流通企業に卸すという形態だ。一方で、こうした大手企業は、自社で造成したツアーも催行している。この結果、(ツアーやアクティビティを催行する)オペレーターと、流通を担当する販売会社の境界線がどんどん曖昧になっており、それがアジア市場における流通をさらに複雑にしている。
5:欧米テック企業がアジア参入に高い関心 イベントに参加したオペレーターの9割がアジア各国からやってきたのに対し、OTAや予約テクノロジー系企業では、約半数が北米と欧州から参加していた。ここから推察されるのは、北米や欧州ではテクノロジー導入が広く浸透し、一服感が漂うなか、グローバルOTAや予約システムの視線はアジアに向かっているということ。アジアでの成長が次の目標となる。
6:我々の産業にはリアルなソーシャルインパクトがある 今回のカンファレンスでは、「I Love Asia Tour」のLien Nguyen氏、「HiveSters」のAchi Thamparipattra氏、「Socialtours」のRaj Gyawali氏を始め、多くのスピーカーから示唆に富んだ話があり、我々の従事するトラベル業界には、リアルで、目に見える形でのインパクトをローカル・コミュニティにもたらすパワーと大きな可能性があることを確信した。旅先での体験を企画・販売するビジネスは、貧困の撲滅、環境保全、女性や小規模ビジネスの活性化、ローカル・コミュニティや地域文化サポートなど、すばらしい成果をもたらすことができる。同時に、ビジネスを成功させて、利益も生み出す。
アジアの各デスティネーションにおけるタビナカ市場はまだ動き出したばかり。しかしトラベル業界の未来の大部分が、ここ、アジア太平洋で描かれていくことは確実だ。今回、バンコクに足を運び、イベントに参加した人々の多くも、まさにその一人一人となるだろう。
カンファレンスが終了し、我々、アライバルのチームは、すばらしい起業家の皆様との出会いや、インスピレーションあふれる講演、アイデアを思い出しながら、考えを深めているところだ。我々も、みなさんも、旅行ビジネスの中で一番面白い分野に関わっており、可能性にあふれた未来がとても楽しみだ。次回、フロリダ州オーランドでまたお会いしましょう。
※この記事は、Arival(アライバル)社が運営するニュースメディアから届いた以下の英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
オリジナル記事:6 Things We Learned from Arival Asia Pacific
著者:アリバル共同創業者兼CEO ダグラス・クインビー(Douglas Quinby)