日本旅行業協会(JATA)はオーストラリア政府観光局(TA)、およびクイーンズランド州政府観光局と「サンゴ保全体験 SDGsプログラム」を共同企画した。
同プログラムはアウトバウンド促進協議会(JOTC)オセアニア・大洋州部会の活動として実施。JOTCでは海外旅行の促進を目的に、旅行会社が個社では取り組みにくい企画を扱う機会を提供しており、今回はSDGsを切り口にグレートバリアリーフのポンツーン(人工浮島)の1日チャーターとサンゴ保全に係るプログラムを企画した。同プログラムに参画する旅行会社が募集型企画旅行や受注型企画旅行に組み込んだり、オプショナルツアーとして販売する。
具体的には、2025年3月5日を「サンゴの日」とし、ケアンズ沖に2022年にオープンした環境配慮型の最新ポンツーン「リーフマジック」をチャーター。サンゴ保全活動の現場を体験するプログラムをはじめ、海洋生物学者による特別講義やアボリジナル文化体験なども実施する。本企画の費用は、オーストラリア政府観光局とクイーンズランド州政府観光局が補助し、JATAが補助以外の費用を負担する。参画する旅行会社は、収益の一部をケアンズに拠点を置く環境保護団体に寄付する。
TA日本・韓国地区局長のデレック・ベインズ氏は「世界自然遺産であるグレートバリアリーフの唯一無二のサンゴ礁を、観光を通じてサステナブルにする活動に参加できることをうれしく思う」と今回の企画の意義を説明。クイーンズランド州政府観光局日本局長のポール・サマーズ氏も「参加者は日常生活でも環境保護のために何ができるか、気づきを得ることがあると思う」とSDGsを絡めた旅行企画の意義を強調した。
グレートバリアリーフをはじめとするサンゴ礁は、観光産業にとって重要な観光資源となっているが、海洋生物としては海中に酸素を供給し、多様な生物の生育の場になり、海水温を安定化する作用があるなど、地球環境に影響を及ぼす存在だ。海水温の上昇や自然災害などの影響でサンゴ礁の減少が危惧されているが、サマーズ氏は「グレートバリアリーフをはじめサンゴの生命力、回復力は強い。保全活動は有意義なもの」と説明した。
教育旅行は戻るも「現状打破の企画が必要」
JATA海外旅行推進委員会の副委員長であり、JOTCオセアニア・大洋州部会会長の高橋正浩氏によると、日本発海外旅行の苦戦が続く中、豪州方面は全体平均を上回るペースで回復。航空便数・座席数はコロナ禍前を上回り、円安の影響は限定的だという。一方で、セグメント別では、教育旅行団体はコロナ前の水準に達したが、それ以外の団体旅行や個人旅行は動きが鈍い。
高橋氏は「この状況を打破するため、JOTCならではの企画をした」と本企画の目的を強調。コロナ禍を機に、旅行会社が地域の課題解決に資する旅行に取り組む傾向が強まっていることや、豪州がSDGsの先進国の1つであることから、SDGsを切り口とした本企画を通じ、旅行の価値向上と海外旅行の強化につなげたい考えだ。
なお、現在、参画を表明している旅行会社は、エイチ・アイ・エス(HIS)、JTB、東武トップツアーズ、日本旅行、阪急交通社の5社。プログラムの参加定員は200名としたが、245名までは受け入れ可能であり、参画希望を受け付けている。