NECソリューションイノベータ イノベーション、イノベーションラボラトリ所長の福井知宏氏が、2025年を迎えるにあたって年頭所感を発表した。
福井氏は2024年について、地域を編集し観光客に届ける「地域観光の共助の担い手」と、それを支える同社の観光DXの事業を通じ、日本の観光業界全体が上向いている兆しを感じたと述懐。
一方で、いま日本が直面しているオーバーツーリズム事態が局所的な課題であり、事業者サイドの問題を解決し、観光客の体験価値を最大化する両立を目指すことは複雑な問題解決の道のりであると指摘し、同社が得意とするデジタル技術を活用し、双方が豊かになる良質な出会いが日本各地で生まれるよう取り組むと力を込めた。
発表された内容は以下のとおり。原文のまま掲載する。
年頭所感
新春を迎え、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
昨年度の年頭所感では、地域を編集し、観光客に届ける「地域観光の共助の担い手」の存在と、そうしたプレイヤーを支えるNECソリューションイノベータが取り組む観光DXの役割について言及させていただきました。
お陰様で、昨年度はそうした取り組みに多くの反響をいただきました。
例えば、北海道道東エリアの阿寒バス株式会社とタッグを組み、空港と市街地をつなぐバス予約のオンライン化の取り組みがあります。また「移動」のオンライン化にとどまらず、移動の目的である観光プラン全体を提案し、観光客の体験全体をシームレスにオンラインで繋げるようになりました。このケースは、阿寒バス株式会社の営業本部取締役・西岡様が、自社の利益に留まらず地域観光全体の利益を考え、動いて下さっていることが原動力となっています。
こうした取り組みを日本各地で進めながら、観光の担い手の皆様と対話をし、日本の観光シーンが「生き残るか衰退するか」の厳しい局面から、日本の観光業界全体が上向いている兆しを感じています。
一方、観光に関わる皆様と、乗り越えていきたい大きな課題も見えてきました。それは「地域と観光客双方にとって、いい出会いとは何か?」という問いです。
例えば、オーバーツーリズム。観光客にとって、人混みに揉まれながら有名観光地を巡ることは、必ずしもいい体験ではないでしょう。受け入れる地域側も押し寄せる観光客に疲弊している状況に直面しています。
一方、視野を広げて見渡すと、オーバーツーリズム自体局所的な課題です。集客に失敗し事業の存続が危ぶまれたり、そうでないとしても繁閑差が激しく、繁忙期に画一的なサービスを届けざるを得ない結果、金太郎飴のような地域の滞在体験につながっている状況もよく目にします。
我々が考える「地域と観光客双方にとってのいい出会い」とは、地域を画一化し、分かりやすく切り取り、ただ観光客を集めるものではありません。各地域にある「らしさ」を生かすとともに、本来観光客の方一人一人が持つ個性や趣味嗜好に寄り添い、最高の体験を届ける、そのような観光像です。しかし、「事業者サイドの問題を解決すること」と「観光客の体験価値を最大化すること」、その両者の両立を目指すことは複雑な問題解決の道のりでもあります。なぜなら、両者を組み合わせることによる課題解決のパターンが多岐に渡るからです。そのような中で、観光地は観光地で解決を図り、観光客は観光客で自分で考えるよう要求され、それぞれが局所的に解決を図っても大局的にみるとあまり幸せになっていない状況が起きているのではないでしょうか。
我々が得意とするデジタル技術を活用し「事業者と観光客の双方が豊かになる良質な出会い」が日本各地で生まれる。それは例えば、観光事業者にとっては、柔軟な価格設定のもと、観光客へのサービスを最適化することを可能にし、観光客にとっては、有名スポットを周るだけではない、自分らしいオリジナルな観光体験が出来るようになることです。
事業者も観光客も、突き詰めれば、個性のある一人の人から成り立ちます。そうした、人と人の思いが繋がるカンコウが、日本・世界の風景として当たり前になる日を祈念し、年頭の所感とさせていただきます。
本年も何卒よろしくお願い申し上げます。
NECソリューションイノベータ株式会社
イノベーションラボラトリ 所長 福井知宏