今年、日本で開業する注目の外資系ホテル、キーワードは「サステナビリティ」と「地域性」【コラム】

2025年も日本国内で数多くの外資系ホテルが新たに開業します。ラグジュアリーホテルやライフスタイル・ホテルの分野でも、日本初進出となるブランドも多いです。

今回のコラムは、今年、日本で開業するラグジュアリー&ライフスタイル・ホテルに注目してみたいと思います。

注目のラグジュアリー&ライフスタイル・ホテル

まず、開業時期の早い順に注目すべき6ホテルを紹介します(下表参照)。都心部での再開発が多いこともあり、高層ビルの最上層階に配置されるホテルが目立ちます。また、2025年は何と言っても「大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)」(2025年4月13日~10月13日)が国内の一大イベントです。この開業に合わせて同地で開業するホテルが2つありますね。

2025年開業予定の主なラグジュアリー&ライフスタイル・ホテル

1. ウォルドーフ・アストリア大阪

JR大阪駅に隣接するグラングリーン大阪南館パークタワーの上層階に位置し、ヒルトンブランドの最高峰として、日本初上陸を果たします。伝統的なラグジュアリーと現代的な快適さを融合させ、特にフィットネス施設やダイニングが充実しています。

大阪・関西万博(2025年4月13日~10月13日)の開催10日前にオープンし、大阪周辺の来客増に対応する戦略です。

同ホテルの「キングプレジデンシャルスイート」(報道資料より)

2. パティーナ大阪

シンガポールを拠点とするカペラホテルグループのライフスタイルブランド「パティーナホテルズ&リゾーツ」が日本で初めて展開する都市型ホテルで、2025年春の開業を予定しています。大阪の上町台地に位置し、地域の文化や伝統を活かしたホスピタリティが特徴。バルコニー付きの部屋を含む約220室の客室を備え、地元の職人や旬の食材を活かしたレストランや、サウンド・パイオニアのデヴォン・ターンブル(OJAS)が設計したスピーカーを備えたリスニングルームが売りです。

同グループでは、同じく2025年に、京都市東山区で開発がすすむ「元 新道しんみち小学校跡地活用計画」において「カペラ京都」も開業する予定です。

同ホテル「リスニングルームbyOJAS」(報道資料より)

3. フェアモント東京

1907年にサンフランシスコで創業したラグジュアリーホテルブランドで、世界各地に90以上のホテルを展開しているフェアモントホテルが日本初進出します。東京湾を一望するロケーションが最大の特徴。29のスイートルームを含む全217室を備え、東京湾と都心の絶景を望むスカイチャペルやインフィニティプールなどの施設を揃えています。

フェアモントは2026年に欧州最大手であるフランスのアコーグループが買収しており、アコーにとってもラグジュアリーブランドとしては日本初進出です。

同ホテル35階の屋外テラスのイメージ(報道資料より)

4. JWマリオット・ホテル東京

マリオット・インターナショナルが展開するラグジュアリーホテルブランド「JWマリオット」が首都圏に初進出、全国ではJWマリオット・ホテル奈良に続いて2軒目となります。JWはマリオット創設者ジョン・ウィラードの頭文字。JR東日本の「高輪ゲートウェイシティ」内の複合棟Ⅰ(South)の23階から30階に位置し、総客室数は約200室の予定です。

「禅」の美学を現代風に解釈したこのホテルは、日本らしい深い藍色をアクセントカラーに、静寂と調和をテーマにデザインされています。

同ホテル客室内装イメージ(報道資料より)

5. インターコンチネンタル札幌

IHGの最高峰ブランド、インターコンチネンタルが札幌市初の外資系ラグジュアリーホテルとして進出します。国内では11軒目のインターコンチネンタルブランドのホテル。北海道の自然美を存分に感じられる設計が売りで、中島公園や豊平川の四季折々の景色を楽しむことができます。

客室やダイニングには、北海道ならではの素材やエッセンスが取り入れられ、非常用発電設備や燃料を備え、災害時にも14日間の運営が可能な設計になっているのも特徴です。

同ホテルイメージ(報道資料より)

6. キャプション by Hyatt 兜町 

ハイアットの最新ライフスタイル・ホテルブランド「キャプション by Hyatt」が、なんば(大阪)に次いで東京に初進出します。地上12階、地下1階、塔屋1階の構造で、約200室の客室を備える予定。木造ハイブリッド構造を採用し、環境負荷の低減にも努めています。

証券の街である日本橋兜町や隣接する茅場町とのつながりを重視して、地域コミュニティと宿泊者の交流が可能なスペース「トークショップ」を設置しています。飲食施設を兼ねた「トークショップ」は、世界各地の「キャプション by Hyatt」に共通の設備です。

同ホテルイメージ(報道資料より)

サステナビリティと地域性を重要視

これら2025年に開業する外資系ラグジュアリー&ライフスタイル・ホテルに共通するテーマとして挙げられるのが「サステナビリティ」と「地域性」です。

「キャプション by Hyatt 兜町 東京」では環境負荷を低減する設計が特徴です。また、「パティーナ大阪」では地元食材を使った料理や、地域文化を感じさせるデザインが採用されています。「フェアモント東京」は、東京湾の眺望を最大限に活かした設計で、都市と自然が調和する空間を提供します。また、「インターコンチネンタル札幌」は札幌の自然美を体感できる設計が特徴です。地域の文化や風景を取り入れることで、ゲストにその土地ならではの体験を提供しています。

一方で、各ホテルの特徴を比較すると、ラグジュアリーの捉え方やターゲット層に違いが見られます。「ウォルドーフ・アストリア大阪」や「JWマリオット・ホテル東京」は、伝統的なラグジュアリーを追求しています。広々とした客室、高級感溢れる内装、格式高いサービスを提供することで、富裕層や国際的なビジネスエリートを主なターゲットとしています。

これに対して「キャプション by Hyatt 兜町 東京」や「パティーナ大阪」は、よりカジュアルで現代的なラグジュアリーを提案しています。コミュニティスペースや地域文化との接点を重視し、若年層や多様なライフスタイルを持つゲストに対応しています。従来のラグジュアリーホテルとは異なる新しい価値観を提供しようとしています。

最近のインバウンド旅行者は「自分だけの特別な体験」「旅先でしか得られない経験」を重視する傾向が強くなってきています。地域コミュニティとの交流を深めることでこうした旅行者を集客し、それが地元雇用の促進や地域経済の活性化につながることが理想ですね。

山川清弘(やまかわ きよひろ)

山川清弘(やまかわ きよひろ)

東洋経済新報社編集委員。早稲田大学政治経済学部卒業。東洋経済で記者としてエンタテインメント、放送、銀行、旅行・ホテルなどを担当。「会社四季報」副編集長などを経て、現在は「会社四季報オンライン」編集部。著書に「1泊10万円でも泊まりたい ラグジュアリーホテル 至高の非日常」(東洋経済)、「ホテル御三家」(幻冬舎新書)など。

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