UNツーリズム(国連世界観光機関/UNWTO)は、2024年の世界の海外旅行者数が前年比11%増の約14億人に達したことを明らかにした。2019年比では0.1%減で、実質的にパンデミック前の水準に回復したことになる。UNツーリズムでは、人気観光国への堅調な需要とアジア太平洋地域での回復が進んだことが主な要因としている。
地域別に見ると、アジア太平洋地域は急速に回復。同地域への海外旅行者数は前年比33%増の3億1600万人となった。
世界最大のインバウンド受け入れ地域の欧州では、域内の強い需要にも支えられ、2024年の国際到着者数は前年比5%増、2019年比でも1%増の7億4700万人。南北アメリカは2019年比3%減の2億1300万人まで回復。カリブ海と中米はすでに2019年の水準を超えた。また、中東は2019年比32%増の9500万人となった。
国別では、エルサルバドル (+81%)、サウジアラビア (+69%)、エチオピア (+40%)、モロッコ (+35%)、グアテマラ (+33%)、ドミニカ共和国 (+32%) は、いずれも 2024年通年で2019年比で2桁成長。また、2024年10月と11月に限ると、カタール (+137%)、アルバニア (+80%)、コロンビア (+37%)、アンドラ (+35%)、マルタ(+29%)、セルビア (+29%)が大幅にインバウンド旅行者を増やした。
観光による総輸出額は過去最高の1.9兆ドルに
2024年の国際観光収入は、実質ベース(インフレと為替レートの変動を調整)で1.6兆ドル(約250兆円)に達し、2023年より約3%、2019年より4%増加した。また、海外旅行者1人当たりの平均支出は、2020年と2021年の約1400ドル(約21.8万円)から1100ドル(約17.2万円)に減少したものの、ハンデミック前の1000ドル(約15.6万円)は依然として上回っている。
2024年の観光(旅客輸送を含む)による総輸出額は、2019年比3%増の1.9兆ドル(約296兆円)に達し、過去最高を記録した。
世界の観光収入上位5か国のうち、英国(+40%)、スペイン(+36%)、フランス(+27%)、イタリア(+23%)は、2024年9月あるいは11月までの実績で、2019年比で大きな成長を見せた。
2025年はコスト高、異常気象などのリスクも
UNツーリズムは、2025年について、アジア太平洋地域の回復が続き、他のほとんどの地域で堅調な成長が見込まれると仮定すると、世界の海外旅行者数は前年比で3~5%増加すると予測。前提として、世界経済の状況が引き続き良好で、インフレが低下し、地政学的紛争が激化しないことを挙げている。
国際的信頼感や将来見通しを評価する最新の国連観光信頼感指数でも、同様に前向きな予想。国連観光専門家の約64%は、2024年と比較して2025年の見通しが「良くなる」または「はるかに良くなる」と回答。昨年より「悪くなる」または「はるかに悪くなる」との回答はわずか9%だった。
また、回答者の半数以上が、2025年に国際観光が直面する主な課題として、輸送費や宿泊費の高騰、および不安定な原油価格などの経済的要因を挙げ、観光客は引き続きコストパフォーマンスを求めると分析している。さらに、地政学的リスク、異常気象、人手不足も重大な課題なりうると指摘している。
※ドル円換算は1ドル156円でトラベルボイス編集部が算出