GDSセーバーがアバカスを買収、アジア強化で市場拡大へ(専門家による解説あり)

GDSほか旅行・観光ビジネスに特化したソリューション開発を行うセーバー(Sabre Corporation)は、2015年5月15日、アジア太平洋地域を拠点とするGDS大手アバカスインターナショナル(abacus)の買収を発表した。アバカスはこれまで同社の設立に関与したアジアの航空会社11社および株式35%を保有するセーバーにより運営されてきたが、今回の買収にあたってセーバーが4億1100万ドルをキャッシュで支払い、残りの株式をすべて取得する。

アバカスは、これまでにアジア太平洋地域59市場の10万社におよぶ旅行会社と取引を行い、各地の航空会社のみならず宿泊施設などと密接な関係を構築してきた。今回の買収により、セーバーはアジア太平洋地域での強固な基盤を確保すると同時に、アバカスを運営する航空会社11社との長期的な販売契約も締結することになった。

今後アバカスは、セーバーの傘下で「セーバートラベルネットワーク事業」を推進していく見通し。同時に、日本国内にてアバカスと全日空(ANA)グループが運営するGDS大手インフィニトラベルインフォメーション(infini)とのパートナー関係も継続していく計画としている。

なお、今回買収されたアバカスインターナショナルの親会社となるアバカスホールディングスはインフィニの40%の株式を保有している(残り60%はANAホールディングスが保有)。

*編集部注:インフィニ株について、当記事の公開時にセーバー社が直接保有する表現がありました。ご迷惑をおかけしました関係各所の皆様にお詫びとともに、修正して再度公開しております(2015年5月18日12時)。


今回の買収劇が意味することは?

今回の買収劇について、フォーカスライトJapan代表の牛場春夫氏に聞いてみた。

まず、牛場氏は今回の買収を「トラベロシティ(Travelocity)売却と同様にセーバーの3つの本業(Airline Solutions, GDS/Sabre Travel Network, Hotel Solutions) 回帰戦略の一環」ととらえている。トラベロシティは北米を中心に人気のあるOTAブランドで、米エクスペディアへの売却時にセーバーは今後ソフトウェアソリューション事業に注力する方針をとる計画を明らかにしていた。中核事業である業務用総合旅行予約システム(GDS)で、世界にリードしていくというものだ。


こうしたことから、牛場氏はセーバーが「アバカスを完全子会社化することでアジアのGDSシェア回復と収支向上を目論むと言うことともとれる」として、この発表の直前にSabreはSabre SynXisのWyndham Hotel Group採用に成功したことを指摘。また、これらのGDSとホテルソリューションの相次ぐ施策が影響してか、株価が上場以来最高値の$26.39(2015年5月14日)を付けた(2014年4月上場(再上場)初値の$16.29の1.6倍)。この株価の上昇に見られる通り、牛場氏は市場がセーバーのの戦略を好感を持って迎えているとみている。

そして、セーバーがアバカス完全買収後に、LCCの拡大が目覚ましく、国によって状況が大きく異なるアジアで、目論み通りのシェア奪回と収支向上を実現できるかに注視していきたいとした。

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