政府はこれまで一般の入場を制限していた日本の公的な施設について、国の歴史や伝統に触れられ、観光の魅力となる施設の公開・開放を進める。
これは、訪日外国人旅行者数を2020年に4000万人など新たな目標とそれに向けた改革を示した「明日の日本を支える観光ビジョン」の施策の一つにあげられていたもの。その具体策について、2016年5月13日の観光立国推進閣僚会議で決定した行動計画「観光ビジョン実現プログラム」と、同日に発表した2016年度版・観光白書にも記載している。
今年公開される対象施設は15軒。国宝の赤坂迎賓館や京都御所など文化財または文化財クラスの施設から、東京大学宇宙線研究所スーパーカミオカンデなど、日本の知の誇りを象徴する施設もあり、国内・訪日の一般観光はもちろん、MICEや教育旅行などの新たな素材として期待できそうだ。今年から制限が緩和され、公開・開放される施設をまとめてみた。
赤坂迎賓館(東京都港区)
接遇等に支障のない限り通年で一般公開。前庭は人数制限のない自由参観、本館・主庭は事前申込制と当日受付制を併用。1日の定員を4000 人に倍増する。別館は事前申込制で1日120人。多言語音声端末も導入する。体験利用の「特別会館」の試行も行なう。
京都迎賓館(京都府京都市)
夏の10 日間に1日1300人定員の一般参観を実施していたが、7月下旬をめどに接遇等に支障のない範囲で、通年で一般公開する。多言語音声端末も導入。
総理大臣官邸(東京都千代田区)
従来の夏休み期間中の見学に加え、9月から小・中学生の見学を執務に支障のない範囲で毎月2日間(土曜日・日曜日)、抽選で実施することを検討。見学回数は年間88回程度を想定。
皇居(東京都千代田区)
土曜日の参観も2016 年度中に実施。当日受付のほか、事前予約にも対応。1回の参観定員を300 人から500 人に増加する。多言語音声端末の対応言語も英語のほか、仏・中・韓語の追加を予定。月曜日は休園。乾通りの一般公開期間は、春季・秋季のそれぞれ5日間から7日間に拡大する。
皇居東御苑(東京都千代田区)
2016 年度以降、三の丸尚蔵館の増築、富士見多聞の公開、富士見櫓前の開放、江戸城模型の設置を順次実施。英・中・韓の案内板の新設や音声ガイダンスの拡充、広報の充実等を行なう。
京都御所(京都府京都市)
従来の参観及び一般公開を再編し、2016 年度中に通年で入園者数制限のない一般公開を実施する。事前予約は不要とし、英・中のガイド案内も用意。月曜日は休園
仙洞御所・桂離宮・修学院離宮(京都府京都市)
参観日でなかった土・日曜日も、2016 年度中に参観を本格実施。当日受付も実施する。多言語音声端末は、英・仏・中国語に加え、韓・西語も拡充を予定。仙洞御所は参観回数を1日2回から5回に増加。いずれの施設も月曜日は休園。
御料牧場(栃木県塩谷郡高根沢町)
2016 年度中に、地元外からの見学会を年2回程度で試行。その結果を踏まえ、拡充策を検討。
鴨場(千葉県市川市、埼玉県越谷市)
2016 年度中に、従来の見学会に加え猟期外に年10 回程度、地元外からの見学会を試行。その結果を踏まえ、拡充策を検討。
信任状捧呈に係る馬車列
2016 年春から、信任状捧呈式の実施に係る閣議決定の期日を捧呈式の1週間前までに行うことを原則とすることにより、広報時期を前倒す。同時に、宮内庁と日本政府観光局(JNTO)ホームページのほか、広報媒体の多様化や情報提供先を拡大し、周知を強化する。
造幣局本局(大阪府大阪市)
年末年始や展示品入替日等を除き、休日開館を実施。貨幣工場の見学は、当日受付・事前予約制を併用。2016 年秋から実施。
東京大学宇宙線研究所スーパーカミオカンデ(岐阜県飛騨市神岡町)
事前予約制の一般開放日の創設を、2016 年度中に検討。予約定員は1日当たり約400 人を想定。宇宙線研究所(東京大学柏キャンパス)に、一般見学者向け展示コーナーを新設する。
首都圏外郭放水路(埼玉県春日部市)
個人見学の一部(1日3回の個人見学のうち1回)について、調圧水槽見学を中心とした簡易コースで実施し、見学者定員を1回当たり25 人から50 人に増加。新たに毎月1回土曜日に個人見学を実施。2016 年6月からの試行で、その後見学機会の拡充策を検討する。
大本営地下壕跡(東京都新宿区)
2016 年度中に、市ヶ谷台ツアーの経路に、地下壕内部のパネル写真、図面、映像資料等を展示。また、米国公文書館、建設工事施工会社等に対して、大本営地下壕に関する資料の調査を実施し、展示内容の拡充を図る。
日本銀行(東京都中央区)
本店本館について、事前予約不要かつ英語にも対応した見学枠を新設。日・英語に加え、中国語のパンフレットを作成し、多言語案内を充実する。2016 年6月から試行。