【年頭所感】マスターカード 日本地区社長 内山憲氏 ―需要の質的変化の理解が重要、成長機会に満ちた年に

マスターカードの日本地区社長 内山憲氏が、2023年の年頭所感を発表した。

内山氏は、観光需要の回復が見込まれる一方、コロナ前とは質的に異なった需要であることを指摘。新しい需要の理解と、需要に訴求するコンテンツ・商材、パーソナライゼーションの3つが重要だと述べた。消費の内容も、現在はペントアップ需要と円安、インフレ、地政学的要因等が複合的に作用しており、正しく把握する必要があると説明。2023年を成長機会に満ちた年にするため、これまでの知見を活用し、政府、自治体、金融機関や各種事業のパートナーシップを通じて、観光産業や地域活性化、キャッシュレスを支援するとしている。


発表された内容は以下のとおり。原文のまま掲載する。


2023年 年頭所感

謹んで新年のお慶びを申し上げます。

まずは、およそ3年という長期にわたり、医療従事者をはじめとした人命の救護、事態の収束に向けてご尽力された全ての方々に深い敬意と感謝を申し上げます。

世界中を襲った新型コロナウイルスにより各種需要の著しい低減・消失というかつて経験したことのない危機に見舞われ、特に当該需要に依拠したビジネスを展開されていたパートナー様の呻吟を聴き、危機を乗り越えるために協業をさせて頂いた3年間でしたが、ようやくコロナ後の生活・需要が徐々に浸透してきました。

2023年は、これまで危機を乗り越えるために費やした工夫や企業努力を糧に、新しい成長をパートナーの皆様とともに実現する年にする所存でございます。

日本でも昨年10月11日から海外からの個人旅行が2年半ぶりに解禁され、各種データにおいても、実感値としても、インバウンドはコロナ前の状況に戻りつつあり、少し遅れてアウトバウンドも戻りつつあるという現状認識をしております。また、特にインバウンドについては、今後の中国や北東アジアでの国境開放による更なる強い追い風を期待しております。

一方で、需要が戻ると言っても、コロナ前の需要とは質的に異なった需要になっており、当該需要を取り込み、健全で持続性のある成長を実現するためには、以下の3点が肝要かと考えており、コロナに対する危機対応およびコロナ後の成長戦略の柱として、このような能力開発を進めて参りました。

  1. 新しい消費者需要のきめ細かな理解:
  2. 当該需要に訴求するコンテンツ・商材の具備:
  3. 適切なお客様に、適切なタイミング・チャネルでコンテンツ・商材をオファーする能力(パーソナライゼーション):

特に一点目の新しい消費者需要のきめ細かな理解は、これまでの理解を一度リセットして考える必要がある分野であり、この点の巧拙が、コロナ後の効果的な政策の実現・ビジネスの健全な成長の成否を分けるものになると思料しております。

例えば、昨年10月の海外からの個人旅行の解禁を機に、インバウンド需要はコロナ前に戻りつつあるお話をさせて頂きましたが、消費の内容を見ると、コロナ前とは質的に異なるものです。なぜなら、現在の消費者需要は、コロナ中の消費者の価値観の変容、過去3年間で蓄積した需要(いわゆるペントアップ需要)の短期間での出現、円安の加速、インフレ、地政学的要因等が複合的に作用し合い喚起されており、コロナ前とは異なる要因の結果によるものだからです。当該需要を正しく把握するには、現時点での消費データ、各種マクロ・ミクロ経済データをリアルタイムで把握し、自社のビジネスにおける意味合いを抽出する必要があります。弊社では調査部門Mastercard Economics Institute(MEI)を有しており、日本のパートナー様の政策・ビジネスにとっての、今起きている消費者の需要・消費の意味合いを抽出する活動を始めております。

また、各種テクノロジーの進歩により、5年前は実現不可能だった事が、現在では実現可能になっております。

上記3点をデジタル技術を用いる事でシームレスに繋ぎ、お客様に最も訴求力のあるコンテンツ・商材を調達し、当該お客様に最適なタイミング・チャネルで提供させて頂くための技術基盤を、ご用意させて頂いており、パートナーの皆様の更なる政策実現・ビジネスの成長にご利用頂く所存でございます。

2023年を皆様にとって健全な成長機会に満ちた年にするため、Mastercardは自社のグローバルネットワーク、決済データを活用したコンサルティングサービスやツーリズム関連の知見を活用し、政府、自治体、金融機関や各種企業とのパートナーシップを通して、観光産業や地域の活性化、安心・安全なキャッシュレスを引き続き支援して参ります。

これまでのご愛顧に改めて感謝いたしますとともに、今年一年の皆様のご多幸とご健勝を心よりお祈り申し上げます。

Mastercard 日本地区社長

内山憲

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