訪日外国人に選ばれる「+1(プラスワン)」の観光地とは? ナビタイム藤澤氏が見出した共通点、誘客戦略へのヒント -トラベルボイスLIVEレポート(PR)

訪日外国人旅行者が訪れることによって、脚光を浴びるようになった観光地が増えている。外国人旅行者の行動をきっかけに、今まで日本人がメジャーな観光地として意識していなかった観光地の魅力を再認識するという構図だ。では、外国人である彼らは、どのようにこれらの観光スポットを見つけ、訪れているのか。

ナビタイムジャパンのトラベル事業地域連携シニアディレクターである藤澤政志氏は、同社が提供する訪日外国人観光客向けナビゲーションアプリ「Japan Travel by NAVITIME」のデータが示す訪日客の足跡をたどりながら、ある1つの共通点を見出した。藤澤氏が「+1(プラスワン)観光資源」と定義した観光地の特徴とは? 2024年11月1日に開催したトラベルボイスLIVEをレポートする。

「効率」によって生まれるルートと観光地

2024年にナビタイムジャパンと共催したトラベルボイスLIVEは、今回のレポート分を含めて計3回。過去2回とも藤澤氏が「Japan Travel by NAVITIME」の利用データや各種調査の分析、それらを基に取材した結果から「訪日外国人が訪れる、日本人には意外な観光スポット」や「次にブレイクする目的地の傾向」を導き出し、その要因を解説した。

その際、これらの外国人観光客の観光地やルート選びの背景には「広域周遊をする際には、交通網が重要であること」「滞在日数が行動範囲に影響すること」「効率的に移動するために、ゴールデンルートのようなルートが生まれていること」があると読み解いた。

その一例として藤澤氏は、北陸新幹線の誕生時にJR西日本がPRした金沢経由の「新ゴールデンルート」が、効率性から定番化していったことを紹介。訪日米国人旅行者の動きを移動データで見てみると、彼らの平均滞在日数は10泊11日くらいだが、1日目は東京で滞在し、3泊目~6泊目は金沢で滞在する割合が増加。その後、関西へと抜けていく。王道のゴールデンルートで関西入りした後、新ゴールデンルートを逆行して金沢に滞在し、東京に戻るパターンもみられるという。

徳島県・祖谷渓の「かずら橋」への観光でも、変化が起きている。「ナショナルジオグラフィック」誌で紹介されたことで、特に欧米系の観光客が多く訪れるようになった場所だが、同誌では和歌山県・高野山からかずら橋を訪れるツアーを、紀伊半島からフェリーで四国に入るルートで設定している。

藤澤氏は「効率的な交通網が、移動パターンに影響を与えている。限られた旅程で移動するため、陸路だけではなく海路まで選択肢に入れるようにもなっている」と指摘。行きたい観光スポットを効率的に移動するため、一般的に日本人がとらないルートを見出していることを指摘した。

ナビタイムジャパン トラベル事業 地域連携シニアディレクター 藤澤政志氏

外国人観光客の観光地の選び方、「+1(プラスワン)観光資源」とは?

では、外国人観光客はどのように訪問する観光地を選んでいるか。

外国人観光客は滞在日数の中で効率的に観光をしているが、誰でも1日のなかに行きたいメインの観光地があるものだ。例えば2日目は京都の金閣寺、3日目は大阪の大阪城という具合。そして、その日はメインの観光地を訪れるために便利な場所に滞在するので、滞在地を起点に近隣スポットを訪れるのが、基本的な観光スタイルと考えられる。

ただし、藤澤氏は「Japan Travel by NAVITIME」の利用データ等を踏まえ「メインの観光地がある域内の観光だけではなく、少し離れたところに行く観光客が一定数いる」と指摘。例えば広島市の場合、欧米系の観光客のメインの観光地である「原爆ドーム」や「平和祈念資料館」とともに、世界遺産の「宮島」が選ばれている。

藤澤氏は「メインの観光地に加えて選ばれる場所は、そこから1時間程度までの距離にあるスポット。この1時間の距離感、時間がポイントだと、私は思っている。メインの観光地から1時間程度の距離にあり、1つプラスする観光地ということで、語呂あわせで『+1(プラスワン)観光資源』と名付けた」と説明した。

藤澤氏が見出した、メインの観光地に追加する「+1(プラスワン)観光資源」の考え方(当日の資料より)

実際、「Japan Travel by NAVITIME」で広島のスポット検索データを分析すると、7位「三瀧寺」と8位「マツダミュージアム」は、「+1観光資源」といえる。このうち三瀧寺は、観光地として意識する日本人は少ないが、藤澤氏は「訪日外国人が+1の訪問先として選ぶ注目すべきポイントが多い」と指摘し、トリップアドバイザー上のクチコミを紹介した。

三瀧寺は、広島市街から北西へ5キロ程度の場所にある、庭園の美しい寺院。自然や宗教、歴史的な雰囲気などが評価され、すでに日本人よりも外国人観光客の来訪が多い場所。トリップアドバイザーのクチコミには「宮島と悩んだが、三瀧寺を選んだ。この2つはかなり違うと思うが、選んで正解だった」「市街地から徒歩でたったの4キロ。今まで見た中で最も美しい寺の1つかもしれない」などと書かれている。藤澤氏は「この場所を独り占めできます」というクチコミをピックアップ。「この言葉は(外国人観光客が+1する観光地を選ぶ)ポイント」と強調した。

同様に、姫路市のスポット検索データを見ると、メインの観光地「姫路城」から40分くらい離れた場所の「書寫山圓教寺」が浮かびあがった。ここはラストサムライのロケ地にもなった寺。トリップアドバイザーのクチコミには「ロープウェイで登れるが、歩くこともできる」「45分のハイキングをした。混雑していない」などが書かれているという。

これらを踏まえ、藤澤氏は「市街地から徒歩、地下鉄などで20分~1時間くらいの圏内で、人混みもなく、ほどよく日本の観光が満喫できる場所。こういう施設や場所を、メインの観光地に+1して訪れるケースが、日本中で増えている」と説明した。

広島市中心部と選ばれている+1観光資源の位置関係(当日の資料より)

ひそかにブレイクしている全国の「+1観光資源」、選ばれる理由

このほか藤澤氏は「Japan Travel by NAVITIME」のスポット検索データからピックアップした全国の「+1観光資源」を紹介。そのいくつかを、注目すべきポイントとともに共有する。

1. 静か、混雑していない穴場感

・京都市「愛宕念仏寺」と嵯峨鳥居本の「重要伝統的建造物群保存地区」、「和束町」

京都駅から約1時間。嵐山の渡月橋から徒歩20分程度にある「愛宕念仏寺」とそこへの道中にある嵯峨鳥居本の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)を訪れる訪日外国人旅行者が増えている。なかでも、重伝建地区沿いの「あだし野念仏寺」にある竹林は、クチコミで「とても静かだった」「嵐山の竹林よりも人がいない。たくさん写真を撮ることができる」と書かれており、藤澤氏は「外国人観光客も、喧騒を離れて観光をしたい」と指摘した。

また、京都市から離れた和束町の検索も増えている。同町は京都駅から1時間、奈良から30分くらいの場所にある茶の産地。京都のお茶所といえば宇治が有名だが、有名がゆえに混雑しているイメージがある。しかし、和束町はまだ観光客の来訪は多くはない。トリップアドバイザーが和束町を巡るツアーを販売しており、藤澤氏は「人里離れた茶畑に案内すること自体が高評価のポイントになっている」と解説した。

2. 都市から一歩足を延ばして郊外へ

・大阪府「箕面大滝」、東京都「江戸東京たてもの園」

箕面大滝は、阪急電鉄の梅田駅から電車で約30分、そこから歩いて1時間ほど。人気の紅葉の時期を外せば、静かにハイキングを楽しめる場所だ。一方、江戸東京たてもの園は歴史的建造物を移築・保存する博物館。東京都心から電車を乗り継いで約50分の自然の豊かな都立小金井公園で野外展示しており、映画「千と千尋の神隠し」のモデルの1つになった場所ともいわれている。

藤澤氏は「『アーバンアウトドア』と表現できる場所への滞在が多く見られるようになってきた。遠い場所ではなく、都会にある自然景観を楽しめる場所が選ばれる傾向にある」と推察した。

3. “+1”の観光地として取り組んでいくという町

・北海道鹿部町

函館から1時間ほど。漁師町の鹿部町は、地元の旅行会社による団体バスツアーで組み込まれることが増えてきた。“漁師のお母さん”と、その日の朝に水揚げされた魚を料理して食べる交流体験を提供している。また、個人旅行者向けには、アドベンチャーツーリズムとして同地の昆布を使った「出汁ツーリズムツアー」も始めた。藤澤氏が同町に話を聞いたところ「町内には宿が小規模の旅館が数件程度しかないため、+1の観光地域として取り組んでいく」という。

藤澤氏は「訪日外国人客が『+1観光資源』を選ぶ傾向を見越して、ツアーやアクティビティなど、受け入れ態勢を整える地域が増えつつある」と話した。

進行役を務めたトラベルボイス代表の鶴本浩司は、「+1観光資源」について「メインの観光地にあわせて、良い観光地だけど混んでないという点で選ばれている。オーバーツーリズムを解決するヒントになりそう」とコメント。また「+1観光資源」は、「マイナースポットばかりではなく、国内向けの観光地であった場所」とも話し、「そこを今、外国人観光客が発見し、魅了されている人が多い」と話した。

トラベルボイス代表取締役社長の鶴本浩司

広告:ナビタイムジャパン  

地域活性化支援  

お問い合わせ  

記事:トラベルボイス企画部

みんなのVOICEこの記事を読んで思った意見や感想を書いてください。

観光産業ニュース「トラベルボイス」編集部から届く

一歩先の未来がみえるメルマガ「今日のヘッドライン」 、もうご登録済みですよね?

もし未だ登録していないなら…