サウジアラビア政府観光庁(STA)の米国・欧州地区代表、ハジム・アル‐ハズミ(Hazim Al-Hazmi)氏は、2024年末に米国で開催されたフォーカスライト・カンファレンスに登壇し、観光大国を目指すなかで最も重視しているのは「本物であること」「パーソナライゼーション」と話した。その内容をレポートする。
サウジアラビア政府はこれまでに、2030年までの観光投資として8000億ドル(約125.6兆円)にのぼる計画を明らかにしている。世界トップ5のインバウンド観光大国となり、年間1億5000万人の訪問客受け入れを目指している。
「(投資額は)これよりさらに増えるだろう。世界的な観光大国を本気で目指していること、我々の野心の大きさが分かるのでは」とアル‐ハズミ氏は話す。
現在、新しい空港やホテル、各種インフラ開発など多数のプロジェクトが進行中だ。例えば、紅海沿岸エリアでは、世界トップクラスのビーチリゾートを目指し、「2024年に4軒のリゾート建設がスタートしたほか、2025年には、16軒の新規開業が予定されている」。同時に、他の地域の事例から学びつつ、サステナブルなビーチリゾート実現にも取り組んでいる。
観光デスティネーションとしてサウジアラビアが成功するためのポイントには、「本物であること」と「パーソナライゼーション」の2点を挙げ、ユニークな旅行体験やストーリーテリングにもっと力を入れていく考えを示した。
「(リアルタイムでの顧客データ活用など)ハイパー・パーソナライゼーションの時代を迎えた今、旅行者は、自ら体験すること、これまで知らなかったストーリーに触れる、思い出深い旅を求めている」(同氏)。
砂漠など定番イメージを打破
STAでは、砂漠などサウジアラビアの定番イメージを打破するために、国内各地の様々なエリアを旅する女性の一人旅のプロモーションビデオを作成し、雪景色なども紹介した。アル‐ハズミ氏によると、欧米からは女性の旅行者が以前より増えており、訪サウジアラビア旅行者の男女比率はほぼ半々という。
「8つのユネスコ世界遺産など、サウジアラビアには、まだあまり知られていない独特のストーリーがたくさんある」と同氏。広大な国土にある見どころの例として、紀元前7世紀からの歴史を誇る古代都市アルウラや、紅海に面して1800キロ続く海岸線などに言及した。
OTAに対しては、「今はまだ小さなデスティネーションだが、サウジアラビアという大きなチャンスを逃さないで」と訴えた。「一説によると、世界の旅行者の90%が、世界の10%の地域に集中しているそうで、オーバーツーリズムの一因でもある。もっと様々なデスティネーションに目を向ける必要があり、その一つがサウジアラビアだ」と話した。
STAにとって、2025年の重点領域は、まず観光分野におけるサウジアラビアのブランド構築だ。インフルエンサー、旅行各社、ライフスタイル・ブランドなど、多彩な相手とのパートナーシップを通じて、「それぞれの視点から、サウジアラビアの物語を発信してもらえるように働きかけている」(同氏)。
また、アル‐ハズミ氏はテクノロジー活用について、障害をなくし、旅行ビジネスの流れを円滑化するのに役立つとする一方、人と人との交流に勝るものはないと指摘。「規定路線のサービスは自動化したらよいが、旅には予想外のことが多く、これは人間が担当するべき」、「体験には人間の介在がやはり重要で、テクノロジーに頼ってはいけない」との考えだ。
これまでに展開したサウジアラビア観光キャンペーンは、順調に結果につながっているという。同氏によると、2022年の米国および欧州からの訪問客数は95万人だったが、2023年は240万人。2024年も前年対比26%前後のプラスで推移しており、300万人に届く見込みだ。
※ドル円換算は1ドル157円でトラベルボイス編集部が算出