JTB、「サステナビリティ」と「DEIB」は交流創造事業の根幹、米国で風潮変化の兆しも「方針に変更なし」

JTBは「サステナビリティ」と「DEIB(Diversity:多様性、Equity:公平性、Inclusion:包括性、Belonging:心理的安全性)」をテーマに、記者懇談会を開催した。懇談会では、代表取締役社長の山北栄二郎氏と担当役員である髙崎邦子氏(常務執行役員DEIB担当・人財開発担当・働き方改革担当)、西松千鶴子氏(執行役員サステナビリティ担当)が、同社の方針や取り組みを説明した。

山北氏は、2021年にJTBが交流創造事業への転換を発表した際、サステナビリティと人材(ダイバーシティ)を事業の根幹と位置付けたことを説明。JTBでは、ダイバーシティは2007年から、サステナビリティはその原点となる活動を約40年前から着手し、徐々にその取り組みを広げていたが、2021年に改めて担当役員を設置した。ダイバーシティに関しては、2023年から「DEIB」へ進化させた。交流創造事業会社として、イノベーションを推進する基盤として重視し、投資を強化しているという。

さらに山北氏は、米国の政権交代を潮目に同国における環境、社会に対する風潮に変化の兆しがあることにも言及。すでに、DEIBの方針を一部停止する表明する大手企業も増えている。

しかし、山北氏は「そもそも当社は流行だから取り組んでいるのではない。一切、方針を変えるつもりはない」とし、その理由の一つとして「(日本と米国の)ダイバーシティの土台が違う」と説明。日本では多様性、公平性など、誰もが活躍できる環境を1つ1つ具体的に整理していくことが必要であり、それによって社員の活力を上げ、共生社会の実現につなげていく考えを示した。

一方で、サステナブルやDEIBに取り組む経済的な価値については「意識をしている」としながらも、直接的な価値だけではなく、会社に対する顧客のロイヤリティ醸成をはじめ「長い目線での経済価値も考えている」とも話した。

社内に起きた変化とは?

JTBのサステナビリティとDEIBの取り組みは多岐にわたる。例えば、サステナビリティでは「交流によって生じる環境に対するマイナスのインパクトを軽減し、交流によって生まれるプラスの価値を最大化することを目指す。それを、志を共にするパートナーと共創に取り組んでいる」(西松氏)という。

その一例が、政府観光局との共創によるサステナブルな旅の拡大や、JTBとパートナー企業の強みを生かした地域創生プロジェクトなどだ。カーボンニュートラルでは「2030年までに自社活動での達成」「2050年までにサプライチェーン全体での達成」を目標に掲げており、「SAFを活用した環境型修学旅行」やイベント開催時のCO2排出をオフセットする「CO2ゼロMICE」などの開発につながっている。

事業基盤にサステナビリティとDEIBを据え、取り組みを強化することで、社員や各事業にどのような変化が生まれたのか。

西松氏は、同社では以前からサステナビリティに関する取り組みをしていたことに触れたうえで、2021年以降に方針を言語化したことによる違いを強調。「自社のやろうとすることが明確になり、社員が自分の仕事に当てはめて考えられるようになった。社内アワードの応募内容の質も高まり、応募者同士でアイデアの横展開なども発生している。事業側でも動いていることを実感している」と話した。

DEIB推進でも同様だ。例えば、組織開発の取り組みの1つとして、各職場単位で問題解決や組織力強化を目的とした「Smile活動」を実施している。2018年に開始した当初は「こんなことをする時間をとるなら、営業に行ったほうがいいのでは」という声も聴かれたが、2023年くらいから自発的な活動が増えてきた。髙崎氏によると「Smile活動はチームビルディング。活動が活発な支店は、数字の結果にも表れている」という。

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