総務省はこのほど、「ビッグデータの流通量の推計及びビッグデータの活用実態に関する調査研究」と題する報告書を発表した。膨大な量におよぶ分析可能なデータ(ビッグデータ)の活用状況を継続的に把握し、ICT政策の課題発見や経済成長との関係性の分析につなげることが目的。報告書の作成は情報通信総合研究所が実施した。
それによると、9産業(サービス業、情報通信業、運輸業、不動産業、金融・保険業、商業、電気・ガス・水道業、建設業、製造業)全体で流通したデータ量は、2014年の見込みで約14.5エクサバイトとなり、2005年以降9年間で約9.3倍に拡大、年平均増加率は27.1%におよぶことが分かった。
集計対象は企業が受信したデータ全般。例えば業務データや販売記録、顧客とのコミュニケーションなどで用いたテキスト、音声、画像、動画などのほか、ウェブのアクセスログ、SNSやブログの記事データ、交通量や気象データなど自動的に蓄積されるもデータがすべて含まれる。
ビッグデータの流通量の推移は以下のとおり。
また、企業によるビッグデータの活用方法を「1. 見える化(データを収集・分析した結果をグラフ等にすることによって状況や関係性を把握できるようにすることなど)」「2. 予測(データ分析によって今後の市場動向や消費者心理などを予測することなど)」「3. 自動化(データ分析の結果を活用して機械やシステムを自動的に制御・動作させることなど)」の3種類に分けてみると、全体平均では「見える化」への活用が59.2%と最も多く、次いで「予測」が40.8%、「自動化」が6.9%となった。
このことから報告書では、データの動きを最初に目に見える形にして現状を把握し、その結果をもって今後の動向を予測、最終的に一連の動作を自動化するという流れがあると分析している。
活用方法を産業別にみると、「見える化」への活用が最も多いのは金融・保険業(70.6%)、次いで不動産業(65.8%)。「予測」への活用では電力・ガス・水道業(66.6%)が最多で、次いで運輸業(45.6%)となった(サンプル数が少ない農林水産業を除く)。「自動化」への活用は全体的に比率が少ないものの、金融業(9.9%)、サービス業(8.2%)が上位となっている。
ビッグデータ活用方法の産業別動向は以下のとおり。
なお、同報告書では、国内外のビッグデータ活用事例にも言及している。
国内では、例えば気象協会が食品メーカーや小売事業者などと共同で、気象データやPOSデータなどを組み合わせて分析、商品の生産効率向上や需要予測、さらに物流の高度化つなげる活動を紹介。
海外では、韓国・釜山市海雲台区役所によるビッグデータ分析チームがSNSに投稿されたクチコミデータ分析事例を紹介。その取り組みにより、従来実施していた観光キャンペーン素材(例:伝統食、ホテルやモーテルでの宿泊)の内容が、観光客の実際の期待(例:屋台での食事、刺身やチゲ、ゲストハウスでの宿泊など)とずれがあることを発見。その後の活動に反映でき、観光サイトの運用経費の節減にもつなげられたとしている。
報告書の全文は以下から参照可能だ。