タビナカの「移動×体験」で周遊促進、「地域事業者主体の観光」で、ひがし北海道がNECと始めた新たな一手を聞いた(PR)

ひがし北海道では「ひがし北海道観光DXプロジェクト」として、地域の観光事業者が主体となったタビナカ商品のオンライン販売がすすめられている。このほど、その新たな施策として、移動手段と観光商品を一体で販売する取り組みが始まった。魅力ある周遊観光のモデルコースをオンライン上で提案し、そこから各事業者の移動や体験の予約につなげている。

推進役は、地域住民と観光客の移動を支える地域のバス事業者だ。いち早く同エリアのオンライン販売に取り組んだ阿寒バスと参画する事業者に、この取り組みを聞いてきた。

地域を走るバスで観光を楽しむために必要なこと

ひがし北海道で進められている取り組みは、各地域のバス事業者が主体となって、地域の多様な旅行商品を束ねて、オンライン販売をするもの。具体的には、バス事業者と地域事業者がNECソリューションイノベータ(NEC)のオンライン販売システム「NECガイド予約支援」を導入。バス事業者が地域事業者の旅行商品を取りまとめ、地域のショーケースとなる販売サイトを展開する。まず、阿寒バスがこの取り組みを始め、現在は斜里バスや網走バスなども、取り組みを進めている。

阿寒バスでは2023年6月からプロジェクトを開始し、地域の観光事業者23社が参画。各事業者が商品のオンライン販売を始めたが、「商品を販売するだけでは、観光客に買っていただけないばかりか、商品を見てもらえていないことが課題として見えてきた」と、阿寒バス営業本部取締役の西岡一麻氏は振り返る。

そこで、2024年6月、阿寒バスのサイト内に、ひがし北海道での楽しみ方を発信する観光情報ページ「ひがし北海道 観光ナビ」を開設。地域の玄関となる空港への到着時から、旅を終えて空港に向かう交通まで、一連の行程と観光をモデルプランで紹介し、行程中に商品予約の導線をつけてすぐに予約に進めるようにした。

「目指したのは、売れるものだけを並べるのではなく、この地域に行ったらどんな体験があり、どのように楽しめるのか、移動手段を含めて1日の流れを見せること。地域事業者の体験や観光コンテンツをはじめ、地域の食や散策が楽しめる場所など、実際に地域を旅するのに役立つ情報を紹介しながら、その場で移動と観光の予約ができる仕組みを作り込んだ」(西岡氏)。

阿寒バスの営業範囲は、知床半島を除くひがし北海道のほぼ全域。とはいえ、すべてをカバーしているわけではなく、利用客からその先のアクセスを聞かれることもあった。ひがし北海道を地域の足で移動するには1つのバス会社だけでは完結できないと考え、他地域のバス事業者とも連携し、提案するモデルプランの中に組み込んだ。

また、ひがし北海道の楽しみ方を広く発信する場のひとつとして、空港と市街地を結ぶ唯一の公共交通である「空港連絡バス」の活用にも着手。まずは阿寒バスが運行する釧路空港/釧路市街地間の「空港連絡バス」乗車券のオンライン販売を開始した。阿寒バスでは、すでに定期観光バスのオンライン販売はおこなっていたが、空港連絡バスは車内での運賃支払い、または空港の自動券売機での乗車券販売だった。

「ひがし北海道 観光ナビ」に掲載したモデルプランの1つ。ルートを示しながら旅程には予約のリンクも

「当社の定期観光バスの利用者は年間約1万人。一方、空港連絡バスは空港/釧路市街間の唯一の公共交通手段で、年間12~3万人が利用している。オンライン販売を始めれば、タビナカでリーチできる旅行者が広がると考えた」(西岡氏)。

販売開始直後の10月~12月は閑散期のため穏やかな推移が続いたが、2025年1月になると訪日外国人旅行者の予約が急増。「空港連絡バスは1日100件前後の予約がある。予約確認メールで『ひがし北海道 観光ナビ』も紹介しており、そこから地域事業者の観光商品の予約が増えてきた。手応えを感じている」と西岡氏は話す。

空港連絡バスの通知メール画面でも案内。タビナカの観光客に地域観光を訴求する絶好の機会でもある 

地方で“移動×観光”が重要な理由

阿寒バスはなぜ、この取り組みに注力するのか。そこにはやはり、人口減少が進む地域の交通事情がある。

ひがし北海道では、公共交通は路線バスとタクシーが1、2台という町村は少なくない。バスも1日数本程度の路線もある。現在も、乗客数はコロナ前には戻っておらず、利用者数の減少によって廃止寸前の路線もあるのが現状だ。「観光客を誘導することで、路線の維持ができる」という考えが、西岡氏の観光に対する取り組みの根底にある。

では、観光客に“地域の足”を利用してもらうには何が必要か。それは、観光客がそこに行く動機だ。魅力的で多様な観光商品と移動手段を同時に示すことで、行動に移しやすくなる。「ひがし北海道 観光ナビ」では、「観光×移動」をプランとして提示することにこだわった。

西岡氏は「都市部のように5分、10分後に次の電車やバスが来るような環境を、我々が作ることはできない。メインターゲットとなる都市圏からの旅行者に、限られた地域の足を利用して快適に観光していただくためには、完全なプランとして利用する移動手段を明確に示す必要がある。かつ、それを事前に予約できることで、旅行者は安心できる」とその重要性を強調する。

本プロジェクトでは、四季を通したひがし北海道の魅力を具体的に打ち出すことで、通年での観光振興も目指している。それが、需要を平準化し、地域に観光客を運ぶための安定した移動環境を提供することにもつながるからだ。そのためにも、幅広い地域事業者の参画が重要。事業者はどんなチャンスが得られるのか。阿寒バスは釧路エリアで年に1回程度、事業者が顔をあわせるミーティングを開催しており、これをきっかけに事業者同士のつながりも生まれているという。

阿寒バス営業本部取締役の西岡一麻氏

空港も観光商品を販売、地域観光との連携を目指す理由

地域観光の玄関口である釧路空港も、この取り組みを後押ししている。同空港を運営する北海道エアポート釧路空港事業所は、釧路空港の公式ウェブサイト内「アクセス」ページに、「ひがし北海道 観光ナビ」へのリンクを掲載した。空港の「アクセス」ページを見る旅客は、タビナカの移動手段を探しているはずだからだ。

さらに北海道エアポートは、地域の魅力的な観光商品を提供する事業者としても、このプロジェクトに参加。2025年1月、釧路空港内でのアクティビティとして「スノーシューツアー」を販売した。標高約100メートルの高台にある地形を生かし、航空機が離発着する雰囲気を感じながら雪山気分を楽しむものだ。

同事業所空港運用部運航情報課リーダーの小林一宏氏は、同社は本社内に観光開発部を設け、地域と一体となった空港基点の観光づくりを目指していることを説明。そのうえで、本プロジェクトに参加した理由を「ひがし北海道 観光ナビ」や地域の観光商品が集まった販売サイトが「多くの方に見ていただける発信力があると感じた」と説明する。

今後、釧路空港では地域の人流の基点となるべく、国内の航空旅客はもちろん、間違いなく増えていくインバウンド、そして非旅客の地域住民に向けた多様なツアーやイベントを企画し、地域の魅力的な観光商品として販売していく方針だ。

同事業所管理部総務課係長の沼田真輝氏は「当社のページで空港のアクセス方法を確認したら、そのまま予約をしたい人が多いと思う。その際に空港で楽しめるアクティビティをはじめ、ひがし北海道のさまざまな体験を知ってもらい、地域の周遊につながれば」と話す。

(左から)北海道エアポート釧路空港事業所の沼田真輝氏、小林一宏氏

地域事業者の参加が印象深い地域の体験に

同プロジェクトでは、地域らしい体験を提供するため、観光事業者だけではなく地域の様々な事業者にも呼びかけし、観光向けの商品化とオンライン販売を促進している。

2024年には、「釧路ろばた学会」が食事券の販売で参画した。釧路発祥といわれる食文化「炉端焼き」の文化を広め、伝承すべく「カウンターがある」「炉端は炭火」などの定義づけをして、それを満たす13飲食店で構成している、地域同業者の組織だ。

観光客が地域の飲食店を利用することは多いが、日本で飲食店が観光客向けに「予約」でなく「食事券」を販売することはあまり例がない。当初、NECは、同会に加盟する「はたご家」と「さかまる」の代表取締役社長である白幡慎太郎氏に両店舗の参画を提案したが、白幡氏と同会の会員店舗は「釧路ろばた学会」での参加を決めた。「観光客が魅力に感じるのは炉端という食文化。炉端焼きを広めるにはいい機会になるし、お客様も店舗を選べるほうがいい」(白幡氏)と思ったからだ。

同会が販売するのは、同加盟店舗を対象にした3000円の共通食事券(ワンドリンクサービス付)。対象店舗での支払い時に利用できる。

白幡氏は「釧路は人口減少が、ものすごい速度で進んでいる。この環境下で事業を継続するためには、観光が1つの答え。炉端焼きは、釧路に来たら一度は体験したい地域の文化。五感で感じ、記憶に残る食体験を通して、再訪や情報発信につながればと思う。この取り組みも、そのきっかけの1つになれば」と期待している。

釧路の炉端焼き店「はたご家」と「さかまる」代表取締役社長の白幡慎太郎氏

ひがし北海道のバス事業者が連携、広域観光プランに

ひがし北海道観光DXプロジェクトは、さらにエリアが拡大しつつある。阿寒バスと同様のスキームによる取り組みが、網走バスや斜里バスなど、エリア内で運行する地域バス事業者を中心に立ち上がり、各社間の連携と相互販売が広がっている。釧路から阿寒へと北上し、網走、知床、羅臼、野付半島、根室へとぐるりと回って釧路に戻る、公共交通機関を利用した道東東部をめぐるグランドコースの提案も可能になった。

「参画するバス事業者のエリアが広がれば、これまでとは異なる観光地との連携など、面白いことができると思う。この取り組みを、ひがし北海道全体に広げていきたい」(西岡氏)。ひがし北海道で起こっている、事業者の変化は地域観光の可能性を広げ、連携の輪が広がっている。

広告:NECソリューションイノベータ

商品:NECガイド予約支援サービス

問合せ先:gias-support@nes.jp.nec.com

本記事で紹介したNECガイド予約支援サービスでの販売ページ例:

記事:トラベルボイス企画部

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