近年、「農泊」を通じて、子どもたちの「学びの旅」を実現しようとの機運が高まっている。農泊とは、農山漁村に宿泊して、その地域ならではの食事や体験などを楽しむ「農山漁村滞在型旅行」のこと。背景には、コロナ禍が人々の生活様式を大きく変え、教育現場にも大きな影響を与えるなか、文部科学省の学習指導要領の改訂でこれまで以上に「探究的な学習」が重視されるようになったこともある。
JTBは農林水産省の補助事業を活用し、旅行会社向けに「こどもたちの未来をつなぐ 農泊販売の手引き」を作成。ここには、生徒たちの成長をサポートし、さらに旅行会社の収益向上につなげるためのヒントがつまっている。
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農泊を提案・販売する意義、背景に学習指導要領の改訂も
「農泊」の狙いは、農山漁村への長時間の滞在と消費を促すことにより、農山漁村における「しごと」を作り出し、持続的な収益を確保して地域に雇用を生み出すこと。農山漁村への移住・定住も見据えた関係人口の創出の入り口となることを目指している。日本の産業を支える地域活性化を担う一方で、訪れる子どもたちにとっては、昔ながらの古民家やジビエ料理、美しい棚田の景観などに出合うことは、得難い経験となる。
農泊では、5人程度の少人数に分かれて、異なる地域で暮らす家庭に入り、一緒に食事や手伝いといった体験をしながら交流することが多い。現在、教育現場で推進されている「探究的な学習」は、主体的・対話的で深い学びを重視している。地域の人々との交流、地域の伝統文化、多様な価値観、生き方や過ごし方を知ることは、「人と違ってもいいんだ」という気づき、自らの将来に向けた課題設定につながる可能性が大きい。
農作物を育てる現場を直接見て、生産者と対話しながら収穫した野菜を食べることは、食への関心を高め、フードロスなどの課題について考えるきっかけにもなり得る。「なぜ、この地域は人口が減っているのだろう」と考え始める子どもたちもいるだろう。SDGsには、人権、経済・社会、地球環境など、さまざまな分野にまたがった17の目標があるが、農泊はその多くの目標と関連づけた学びを提供できるといえる。
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農泊を提案・販売する意義(レポートより)
旅行会社のメリットとは、業務効率化・差別化要因に
現在、子どもたちを取り巻く旅の環境は大きく変化している。学校は、これまで以上に旅行先での様々な体験を通して「学ぶこと」を中心に据えた修学旅行を考えており、手配・斡旋する旅行会社も変化に沿った提案が不可欠だ。農泊地域での深い交流は、子どもたちのなかに深く刻まれることから満足度が高く、結果的に学校・保護者から旅行行程全体の評価を押し上げる傾向がある。農泊地域との十分な調整を踏まえ、経験値や地域との信頼関係が差別化要因となり、継続して受注できる可能性が高まる。
また、農泊は立ち寄るだけでなく、宿泊・体験コンテンツが充実した滞在型旅行を実現することで、地域経済の利益最大化を図るとともに、旅行会社、学校にとっても移動が少なくなるメリットがある。インバウンドが急増し、貸切バス代や宿泊費なども高騰するなか、費用を抑え、受け入れ組織と連携しながらの業務効率化を図ることにもつながる。
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体験プログラムや確認ポイントも幅広く紹介
「こどもたちの未来をつなぐ 農泊販売の手引き」では、人数規模の大きい教育旅行を受け入れる際の、滞在中プログラムなども具体的に紹介している。多くの地域は学校団体が到着後、生徒を歓迎し滞在期間中の注意事項などを入村式で説明し、班ごとに各家庭に分散し宿泊・食事を含むさまざまな体験をおこなう。課題設定、事前学習、現地学習、事後学習、新しい課題のスキームに沿ってプログラムが組まれているケースも多い。
一例として、ESD(持続可能な開発のための教育)人材育成を図る徳島県三好市のDMO「そらの郷」の課題解決型学習プログラムがある。このプログラムでは、事前学習として出前授業、地元高校生とのTV会議を経て、夕食づくり、阿波おどり演習などの民泊・家業、集落フィールドワークを体験し、振り返り、まとめをおこなう。さまざまな実践体験から、新たな課題、複数の答えを模索する取り組みだ。
農泊の体験プログラムの例(レポートより)
手引きでは、農泊体験のターゲットとなる学校について、一般的に考えられがちな都市部だけでなく、地方部でも、気候や文化の異なる地域、国際教育を推進する学校、社会課題解決や探究学習に関心のある学校など、さまざまな提案をしている。また、農泊地域を手配・斡旋するうえで基本的な流れ、スケジュール、セレモニー会場、移動方法、巡回体制、宿泊施設の営業形態、安全管理体制などの確認ポイント、全国の農泊受け入れ地域の人数や体験プランなどの情報も豊富だ。
実際、農泊に参加した子どもたちからは「学んだことは、みんな支えあっているということ」「農作業が楽になるものがたくさん生まれている。技術の向上や、農家の高齢化が深くかかわっていると思いました」という声が挙がり、受け入れ地域からも「学校では見ることができない生徒の表情や一面を知ることが出来たと感激される先生も多い」などといったコメントが寄せられている。これまで以上に深い学びが求められている今だからこそ、子どもたちの未来に向けて、旅行会社は農泊、民泊を軸にした探究旅行を提案してみたい。
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お問い合わせ:農泊旅行博・商談会運営事務局(株式会社JTB 霞が関事業部)nouhaku-travelfair@jtb.com
記事:トラベルボイス企画部